映画レビュー 「スラムドック$ミリオネア」


今年のアカデミー賞最多8部門に輝いた映画「スラムドック$ミリオネア」を先ほどみました。


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結論から言うと、かなりおもしろかったです。星4.5個。


[とりあえず あらすじ by シネマトゥデイ]
テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマールだったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく。

という感じの話です。


最初のほうはただ主人公がクイズの正解を知ることになった理由が明かされていくだけだったので、このままどういう展開になるんだろうと思っていましたが、後半は前半におかれた布石がバシバシ功を奏してかなりおもしろいです。話がすごくよくできていると思いました。(ネタばれになるので詳しくは書きませんが)


監督はご存知ダニー・ボイルですが代表作「トレインスポッティング」よりもこっちのほうが私は好きですね。インド人とインドの風景が画的にもかなりかっこよく撮れています。

世界一の映画産出国であるインドの、しかもボリウッドで有名なムンバイが舞台だけあって(が理由かどうかはわかんないけど)、出演してるインド人俳優さんたち、子役も含めて演技もすごく上手。一人も知りませんでしたが、みんなボリウッドスターなんでしょうね。


ちょうど昨年私はこの映画の舞台となったムンバイを訪れたのですが、なじみのある場所もちょくちょく登場して、それがさらに個人的なところでおもしろさを増幅させた気もしますが。。。



一つ気になったのは、スラム育ちの主人公が英語をペラペラ話すところ。

映画前半はほとんどヒンディー語が話され、それに対応する英語字幕が出ているのですが、後半はほぼ英語だけになります。前半の主人公はヒンディーを話しますが、後半はほぼ英語だけ、しかもペラペラ話します。

主人公の現在の職業がテレフォンサポートセンターで働くチャイ屋という設定なのでたしかに英語を多少話してもおかしくはないのですが、小学生くらいの年齢のときもかなり英語を話している場面があります。学校のシーンでは英語で授業が行われていましたが、その学校もとある理由ですぐに行かなくなってしまいます。

成長していく過程で、途中外国人観光客相手のガイドの仕事をするくだりがあったりもするのですが、それ以前のところでも結構英語を使っています。

後半大人になった主人公と主人公の兄貴が二人きりで話すシーンがあるんですが、そこも全部英語。幼少期はヒンディーで二人とも話してるのに。普通兄弟だったら大人になってもネイティブであるヒンディーで話すんじゃないかなと思ってしまいました。


ちょっとしかインドのことはわかりませんが、私がインドに行ったときに感じた範囲で言うと、スラムのようなかなり貧民街にいるインド人はそんなに流暢に英語を話せないような気がします。バリバリに観光客を相手にしているインド人ならありえる話ではありますが、な~んかそこは違和感を覚えました。

ただ、もし主人公が英語がカタコトならこの映画は成立しない気がするので仕方ないとは思いましたが、なんか途中で違和感を覚えはじめるとずっと最後まで引きずってしまうのでちょっとそこは気になりましたねー。(まぁでも実際のところはよくわかんないです。もうほとんどインド人みたいになっているインド在住の日本人の友人に今度ムンバイのスラムの現状を聞いてみたいと思います)

ということでその辺差し引いて星4.5個です。でもわたくし結構採点甘いので悪しからず。


エンドロールの最初のほうに、ビクトリアターミナス駅の構内で出演者が踊るシーンがあるのですが、そこは北野武監督の「座頭市」での農民が農具を持って踊るシーンみたいな感じでした。まぁインド映画でよくあるボリウッドダンスだと言えばそれだけなのですが・・・。なんとなく座頭市のあのシーンっぽいなと。。

でもなかなかそこはかっこいいので、劇場公開後に映画館で観られる人は、本編が終わっても席を立たないほうがいいかもしれません。

普通は大量のインド人でごったがえしているビクトリアターミナス駅なのに、誰もいない状態で踊っているから、なおかっこよく見えたのかも。。



最後にこの映画にもたびたび登場するムンバイの世界遺産「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(旧名ヴィクトリア・ターミナス)」の写真を。相当カッコイイですよこの駅。

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コメント

  1. Chiro より:
    この映画面白そうやね。前にTVのCMで見た時は多分見ないだろーなーって思ったけど、レビュー見て気が変わりました。大衆向けに作られてるCMと身近な人の書いたレビューとでは随分伝わり方が違うもんやね。

    スラムを題材にした映画といえば、自分の中ではブラジル映画のCity of Godを思い浮かべるんだけど、City of Godの方は夢も希望もないスラムの現実って感じやったけど、(まああれはあれで好きやけど)こっちの方は希望ありそうな感じやね。

    写真の駅知らなかったわ。ぱっと見、完全に駅じゃないねw最後の写真とかすごくいい感じじゃないっすか。
  2. ryu より:
    最近忙しくてテンテコマイのryuです。
    おいもこの映画は見ましたが、おもしろいですよぉ。marと同じくオススメです。
    今年のアカデミー賞で8部門独占したのも納得です。この映画をみてインドに行ったら靴に注意しようと思いました。
  3. ブッダミトラシャハレ より:
    こんにちは。はじめまして。
    私もインドのことはあまり詳しくありませんが、分かる範囲でMarさんの疑問点にコメントします。

    この映画の舞台になっているのはムンバイ中部のバンドラ(快速の停車する駅で言うとアンデヘリ駅とダダル駅の中間と想像すれば分かりやすいと思いますが)のスラムです。ちょうどバンドラ・クルラ・コンプレックスにあるムンバイ証券取引所のウェスタンハイウェイを挟んだ反対側あたりでしょうか。ムンバイのあるマハラシュートラ州の母語といえばマラーティー語を思い浮かべると思いますが、このスラムに住む人々の多くはムンバイ外からの流民であるためマラーティー語も使いません。彼らはヒンディー語を使いますが、それも映画で話していたような標準アクセントのヒンディー語ではなく、ウルドゥー語がMIXされた独特なヒンディー語を話します。ウルドゥー語がMIXされた経緯については1947年の印パ分離独立後に多くの人が東パキスタンから亡命してきてバンドラ周辺にスラムを形成したことに起因しますが、この説明には第1次~3次印パ戦争の理解を要しますので、ここでは割愛します。

    もちろん彼らは全く英語を話しません。大人であろうとスラム内の会話に英語を使うことは皆無です。ではなぜ劇内の登場人物は英語をーそれもきれいな英語をー話しているかというと、それはもはやインドの言語の話ではなく、商業的な話です。ヒンディー語映画より英語映画の方がマーケットが大きいーさらに綺麗な英語でないと観客が聞き取れないーそれだけです。もちろんこの映画がイギリス映画であるということにも起因すると思います。自国内で公開してもヒンディー語を分かる人はいませんから。
    なお、ビクトリアターミナス駅の構内でのダンスシーンは、インド人とボリウッド映画界に対してのオマージュであると私は理解しました。

    以上、かなり簡単に書きましたが参考になりましたら幸いです。
  4. Mar より:
    # Chiro
    これはおもしろいから一応観たほうがいいと思われます。インドのアングラな暗い部分も少しだけ描かれてたけど、実際はこんなもんじゃないやろっていう感じはしました。ビクトリアターミナスは一見ヨーロッパの聖堂みたいに見えるけど、中に入ったらインド人しかいません。。。


    # ryu
    さすが映画マニア。公開前に見てるとは相変わらず早いですねryuちゃん。
    インドに行くときは靴の変わりにビーサンを履いていったほうがいいですよ。NikeのAirとか履いてたら、足首ごと切り落とされて盗まれますから。


    # ブッダミトラさん
    はじめまして。コメントありがとうございます。すごくインドにお詳しいですね。勉強になりました。

    舞台はバンドラ周辺のスラムだったんですか。途中で洗濯施設が出てくるシーンがありましたので、私が訪れたムンバイ最大のドービーガートの近くのスラムなのかと考えましたが違ったようですね。すぐ横に列車が通っていましたので別のところかもなとは推測したのですが。

    スラム育ちの主人公のヒンディーと英語を話すことについてですが、やはり商業的な理由だったのですね。私が感じた違和感はあながちおかしくはなかったということですか。
    おそらくインド人がこの映画を見たら、日本人がラストサムライを見て渡辺謙が英語がペラペラなのに違和感を覚えるような感覚になるのでしょう。

    話されているヒンディー語も、私ですら聞き取れる単語「バイサ、アプカ等」がいくつかあるほど綺麗な発音でしたからね。スラムのインド人があんな綺麗なヒンディーを使うはずがありませんもんね。映画でもインド人にだまされてしまいましたよ。

    星4.5個つけましたが、最初違和感に感じていた現実性の部分が、明らかに少し欠落していることがわかりましたので、星4個に格下げしたいと思います。

    ビクトリアターミナスを多用しているところもイギリス映画ということが原因かもしれませんね。イギリスのビクトリア女王の権威を今もなお訴えているという意味で。

    またブログをたまにのぞいてもらえると幸いです。インドカレーのことも少しは載せていますので。宜しくお願いします。

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